2014年10月21日
修理とは
家具の修理、私がお受けする時には「絶対に元には戻りません。只、ぼかして分かり難くすることは出来ます。それで宜しいでしょうか?」と必ずお客様に確認するようにしています。つまり新品の状態に戻すことは難しく、なるべくその箇所が目立たない様にすることしか出来ないのが家具の修理、そう理解して頂いてから作業に入ることにしています。
例えば出だしの頃のテレビ、映らなくなったら真空管を交換する、たちまち復旧し「あっ、映った」と家族一同大喜び、こんな具合に行かないのが家具の修理なのです。機械と違い生きている木が相手、真っ新な状態に戻すことは不可能と言っても良いでしょう。
人間だって同じ、10年物位までは切り傷なんてヨモギの葉っぱをすり潰しそれを患部にちょこちょこっと塗って治療完了、直ぐに遊びに復帰したものです。20年物、ここらも傷なんて気が付いたら治ってた、ねっそうでしょ?
ところがこれが40年物、そして50年物へと齢を重ねる毎に治りが遅くなるのです。病院へ行っても完治するまでにヨモギの倍以上の時間が掛かる、悲しいけどこれはもう自然の摂理と申せましょう。だからですねえ、家具だって一緒なんですよ。
さて先般、ある引っ越し業者の方が来店されました。作業中にドレッサーの下部に傷を付けてしまいそれを修理出来ないかとのご相談でしたが、写真を拝見する限り何か鋭利な物が当り表面が凹んでいるのが分かります。
画像下の方、○印で囲った箇所。

拡大図。画像ではお分かり難いかもしれませんが傷の深さは5mmほど、衝撃の大きさが分かります。

こういうのは頓原弁で「いたしい」、標準語で言えば非常に難しいのですよ。先ず凹部を木工パテで埋める、これだけ傷が深いと2~3回に分けて埋めるのですがまあここまでは誰でも出来ます。問題はその後、これが黒とか白の単色で塗りつぶしてある物ですと塗料を吹き付け「ハイ完了」となるのですが、このドレッサーは木目が美しい桜材を使い淡い色に仕上げてあります。
ともかく修理は濃い色ほど容易、少々のムラは塗装で隠せます。しかし淡色で木目のはっきりした物ほど粗が分かる、つまり作業の良し悪しがそのまま目に付いてしまうのです。ここらあたり化粧と一緒、こんなことを言えば女性の方に怒られそうですが。
さて今回は木工パテが乾いてから下地処理、それから着色、そしてですねえ、その上から何と木目を手書きして行くのですよ。そりゃあもう根気のいる仕事ですが子供の頃は美術・音楽・図工、つまり芸術的な教科は「ワシの息子だけえのお、まあ仕方無いわ」と父に言われ続けていた私ですから常人以上に手間が掛かるのです。おそらく幼馴染みの面々なら「お前が着色して手書き?、嘘じゃろ」、口を揃えてそう申す事でございましょう。
そして最後にぼかしのための塗装、艶消し塗装を行います。淡色ほど粗が分かると前述しましたが、それと同様に艶がある物ほど粗が見えてしまいます。例えばピアノはピッカピカの艶塗装、これはピアノ塗装と呼ぶのですが、傷はおろか指の跡さえはっきりとわかってしまうのです。余談ですが、私は淡色でピアノ塗装の家具などには決して手を出さないようにしております。
さあこれで一連の作業が終了、仕上がったのかどうか、まあ私としては精一杯のところなのですよ。繰り返しますが家具の修理とはぼかして分かり難くする事、これが限界、家具屋にそれ以上を求めてはいけません。
う~ん80点、かな?

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ところがこれが40年物、そして50年物へと齢を重ねる毎に治りが遅くなるのです。病院へ行っても完治するまでにヨモギの倍以上の時間が掛かる、悲しいけどこれはもう自然の摂理と申せましょう。だからですねえ、家具だって一緒なんですよ。
さて先般、ある引っ越し業者の方が来店されました。作業中にドレッサーの下部に傷を付けてしまいそれを修理出来ないかとのご相談でしたが、写真を拝見する限り何か鋭利な物が当り表面が凹んでいるのが分かります。
画像下の方、○印で囲った箇所。

拡大図。画像ではお分かり難いかもしれませんが傷の深さは5mmほど、衝撃の大きさが分かります。

こういうのは頓原弁で「いたしい」、標準語で言えば非常に難しいのですよ。先ず凹部を木工パテで埋める、これだけ傷が深いと2~3回に分けて埋めるのですがまあここまでは誰でも出来ます。問題はその後、これが黒とか白の単色で塗りつぶしてある物ですと塗料を吹き付け「ハイ完了」となるのですが、このドレッサーは木目が美しい桜材を使い淡い色に仕上げてあります。
ともかく修理は濃い色ほど容易、少々のムラは塗装で隠せます。しかし淡色で木目のはっきりした物ほど粗が分かる、つまり作業の良し悪しがそのまま目に付いてしまうのです。ここらあたり化粧と一緒、こんなことを言えば女性の方に怒られそうですが。
さて今回は木工パテが乾いてから下地処理、それから着色、そしてですねえ、その上から何と木目を手書きして行くのですよ。そりゃあもう根気のいる仕事ですが子供の頃は美術・音楽・図工、つまり芸術的な教科は「ワシの息子だけえのお、まあ仕方無いわ」と父に言われ続けていた私ですから常人以上に手間が掛かるのです。おそらく幼馴染みの面々なら「お前が着色して手書き?、嘘じゃろ」、口を揃えてそう申す事でございましょう。
そして最後にぼかしのための塗装、艶消し塗装を行います。淡色ほど粗が分かると前述しましたが、それと同様に艶がある物ほど粗が見えてしまいます。例えばピアノはピッカピカの艶塗装、これはピアノ塗装と呼ぶのですが、傷はおろか指の跡さえはっきりとわかってしまうのです。余談ですが、私は淡色でピアノ塗装の家具などには決して手を出さないようにしております。
さあこれで一連の作業が終了、仕上がったのかどうか、まあ私としては精一杯のところなのですよ。繰り返しますが家具の修理とはぼかして分かり難くする事、これが限界、家具屋にそれ以上を求めてはいけません。
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Posted by 府中店長 at 08:20│Comments(0)
│家具の修理
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