府中家具　バンザイ！

　高校時代、土曜日の夜8時から大家さんの母屋の居間に下宿生7名が集まり、小父さんや小母さんと一緒に煎茶を頂きながら「8時だよ全員集合」を見るのが週に一度の楽しみでした。これは「お茶会」と呼ばれておりまして、下宿生にせめて週一でテレビをとの小父さんの好意で続けられていました。

　さて大学時代、テレビなんて何年目に入手したのか？おそらく誰か先輩か友人から譲り受けたのだと思いますが、私も又そのテレビを友人Kに譲って島根に帰ったと記憶しています。私が貰った時点でかなりの年代物だったのですが、その後Kはそれを質入れしたと言うのですから驚きます。当時はあんなテレビでも質屋さんはお金を貸せてくれたんですねえ。今にして、あれは良い時代だったと感慨を新たに致しております。

　さてその大学時代、テレビから流れるコマーシャルに洗脳されました。田舎ではお目に掛かれない都会版、「伊東に行くならハトヤ、電話は良い風呂」、王さんの「ナボナはお菓子のホームラン王です、森の詩もよろしく」、「丸い緑の山手線、真ん中通るは中央線、新宿西口駅の前、カメラはヨドバシカメラ」等々数々の名作？、恐ろしいもので今でも簡単に口ずさむ事が出来ますねえ。勉強のことなどちっとも覚えていないのになあ・・・・・。

　そしてその中に「♪スタイリー　スタイリー♪」と女性コーラスが歌い、最後に外国人男性が「ワタシニデンワシテクダサイ、ドウゾヨロシク」と外人訛り？の日本語をしゃべる健康器具スタイリー、覚えていらっしゃいますか？ボンボンベッド状と申しましょうか折り畳みベッド状と申しましょうか、ともかくそんなベッド状の器具に寝そべって体を曲げたり反らしたりしてダイエットをする、あれは正に今日のダイエット機器の先駆けとなった商品でしたねえ。実は先般の四国旅行でのこと、このスタイリーのCMを鮮やかに思い出しました。

　きっかけは実に些細な事でして、アサヒビール四国工場でジンギスカンをたらふく食べた後、隣に座っていたO先輩が「お前こうして見るとよう肥えとるなあ」と言われたのです。「ウエストが85センチでしてねえ、自分でもこれはちょっとイケンなあと思っとるんですわ」と答えますと、「ダイエットせいよダイエット」と重ねて仰います。そしてその時、突然頭の中に「♪スタイリー　スタイリー♪」のメロディーが流れました。おそらくダイエット＝スタイリーと思考回路が反応したのでしょうね。それにしても懐かしやスタイリー、あの外人さん、何処でどうしていらっしゃることか？

　そして帰路の車中、先輩方から如何に多くの健康器具が自宅に眠っているかというお話しを伺いました。いくらペダルを漕いでも全く前進しない室内自転車、コンベアの上をひたすら歩く歩行器？、腹筋をするための座椅子、足を閉じたり開いたりを一日僅か60秒すればダイエット効果抜群、しかしとても60秒は続かないと聞かされた器具等々。そして驚いたことに、「あっ、それ家にもあるよ」「俺のとこも」と先輩方は異口同音に仰るのです。

　多くは奥様が買い求められ不幸なことに何時の間にか忘れ去られた多くのダイエット機器達、押し入れの奥かはたまた倉庫の片隅か？「捨てた覚えは無いけん、家の何処かにあるんだろうなあ」と仰る先輩方。スタイリーも、きっと同じ運命を辿ったんだろうなあ。




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