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2012年03月08日

Tの気持ち、分らぬでもないが

 昨定休日、一月振りに授産施設に入所している友人Tを訪ねました。前回同様、カンロ飴やコーヒーなどの手土産と共に今回は西岸良平さんの「鎌倉ものがたり」を持参しました。まだ本を読むまでには快復していないTですから、一先ず漫画からと思い持って行った次第です。事務所で面会の旨を告げて待っておりましたら直に歩行器を使うTが笑顔で姿を見せましたが、何か足取りが心許ないような気が致します。

「おい会って早々で悪いけどなあ、お前、自主トレを怠けとりゃあせんか?」
「分るか?」
「その足運びを見たら誰でも分るがな」
「この頃体調が良くてなあ、ついつい怠けてしまうんよ」
「お前の言う事は訳が分からんのお、体調が良ければ自主トレも出来るだろうが」
「う~ん、そうなんだけどなあ。一年前に比べると体が良くなってるのが自分でも分るだろ、そうするとそれに安心してしまうんだよなあ」
「体が良くなっても歩けんとどうしようもないがな。寝たきりになったらこの施設を出にゃあいけんのだろ?お前自分でそう言っとったじゃあないか」
「うん、そうなんだけどなあ」

 Tがお世話になっているこの施設の入居者は精神的に疾患を持った方達が多いのですが、歩行器でも杖でも自力で動ける事が入所条件になっています。つまり動くことが出来なくなった時点で退所しなければならず、そうなればTの住むところが無くなってしまうのです。自分でそれを百も承知しているはずなのに歩行練習の自主トレを怠けるなど言語道断とは思いましたが、Tの言う事も分らぬ訳ではありません。

 3年程前にアルコール依存症と栄養失調で倒れているところを近所の人に発見され、その方が「これはもうてっきり死んでいると思ったよ」と述懐されたそうですが、救急車で運ばれた時の体重が35㎏と言いますから死の一歩手前であったことは事実です。それから1年間は記憶の無い入院生活、その後記憶を少しずつ取戻しての入院が1年間続きやっと愁眉を開いたのが昨年の暮れでした。自分ながら良くぞここまで快復したとTが安心するのは良く分りますが、栄養失調による小脳のダメージは意外に大きく、体調は良くともこのままでは歩行器による移動も困難になるとお医者さんからは言われているのです。ここは一番心を鬼にしてでも言わなければならない、そう思った私は言葉を続けました。

「お前なあ、もし動けんようになったらどげする?もうお前には行くところは無いんだで」
「うん、良う分っとる」
「それが分っとるんなら自主トレをせんかい。それとお前はワシと姪御さん以外は面会を断わっとるみたいだけど、それはお前が人様に今の自分の姿を見せたくない、そう思っとるんじゃろ?」
「うん、やっぱり恥ずかしくてなあ」
「だったら尚更だがな。自主トレして杖歩行が出来る様になって、面会の人達とも胸を張って会えるようにならんとイケンがな。お父さんやお母さんも、それを一番願っておられるはずだで」
「うんうん、お前の言う通りだなあ」
「それとなあ、ワシもだてや酔興でお前に会いに来るんじゃあないで。今度行ったらお前がどれ程歩けるようになっとるか、それを楽しみにしてここに来るんだがな。お前、ワシの気持ちが分るか?」
「うん、仏さんの事も良くしてくれてお前には感謝しとるよ」
「感謝なんかして貰わんでもいいわい、ワシの気持ちが分るかって聞いとるんだがな」
「ご免なあ、良く分ったよ。明日から頑張ってみるわ」
「おおそうか明日からなあ、頼むけん頑張れよ。友達もみんなお前の事を心配しとるけんな」

 ちょっと言い過ぎたかなとは思いましたが、私の言いたい事は分ってくれただろうと思い施設をあとにしました。何せ動けなくなったら住むところが無くなる、Tをそんな目に遭わせる訳には行きませんから。




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Posted by 府中店長 at 09:46Comments(2)店長日記