府中家具　バンザイ！

　昨夜同い年の3人がある用事で集まり、それが終わった後に「せっかくだから一杯やろうか」とそのまま町内の居酒屋さんに流れました。何が「せっかくだから」なのか良く分かりませんが、ともかく寒い夜は熱燗に限ります。

　小さな町で居酒屋さんの数も少ないものですから、どのお店に行っても大概知り合いの誰彼に会うことになります。「やあどうも」、「おっ久しぶりだね」などと言葉を交わしながらカウンターに座りますと、カウンターの一番奥に後輩のK君の姿。

　そのK君ともグラスを合わせ飲み始めたのが9時前でしたが、彼がテレビのリモコンを手にこう言いました。
「チャンネル（最早死語ですね）、替えてもいいですか？」
「9時じゃろ、出来ればNHKにしてくれんかなあ」
「いや自分もニュースが見たいんですよ」

　そしてK君がチャンネルを切り替えた途端、熊本の女児殺害ニュースが目に飛び込んできました。卑劣としか言い様のない事件に暫し店内の目は画面に集中、「こんな犯人、市中引き回しで獄門だよ」と小上がりの席に陣取った先輩Oさんの吐き捨てるような声、皆頷きながらも画面から目を離しません。

　トイレの中で女の子の首を絞めて殺害、遺体をリュックサックに入れて現場を立ち去り川に遺棄するとは言語道断、これはまともな人間のすることではなく人非人の所業です。被害者の心ちゃんのあどけない写真を見つめながら「恐かっただろうね、苦しかっただろうね、安らかにね」とご冥福を祈り、同時にこの犯人に対して激しい憤りを覚えました。

　報道によればこの人非人は3時間近くもスーパーのトイレ付近を徘徊し、誰でもいい、女児が一人でトイレに入るのを待ち構えていたそうです。「誰でもよかった？」、それを知らされた時のご両親のご心中如何ばかりかと拝察致します。

　余りにも悲惨な事件の報道に、その後に続いた前原さんの外国人献金問題も入試漏洩事件の再現画面も「ふーん、そう」と余り頭に入って来ませんでした。全く酷い世の中になったもんだわなあとグラスを重ねていましたら、またしても背後から先輩Oさんの声。

　こんな事件遣り切れないと思われたのか、はたまた後輩の私達をたまには慰労してやろうと思われたのか、「よし、今日はワシが奢っちゃろう」と鶴の一声。「いやOさん結構ですよ」と言う間も有らばこそ、さっさとお勘定をして「お先に」と帰って行かれました。

　成る程なあ、人に奢るってこう言う事か。タイミング、その場の空気や顔触れ、そんなこんなを考えられた上での「奢り」だったんだろうなあ。いやはやお見事、Oさん、昨夜はご馳走様でございました。




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