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2010年12月04日

「永訣の朝」

 昨日配達の途中、横殴りの雨と共に霙が降ってきました。いよいよ御出でなすったかと空を見上げれば、どす黒い雲がもの凄い勢いで東の方へ流れて行きます。寒いのは嫌ですがこれも自然の理、山陰は間もなく冬本番となりそうです。

 閑話休題、霙がフロントガラスを叩くのを見ている内に、有名な宮沢賢治の「永訣の朝」を思い出しました。恐ろしいもんですねえ、高校の時に暗記するほど何度も目を通した詩ですから、冒頭の部分がスッと口をついて出て来ました。(読み易いように、旧仮名使いの部分は少し変更して書いてみます)

 今日のうちに遠くへいってしまう わたくしの妹よ
 みぞれが降って おもては変に明るいのだ
 (あめゆじゅとてちてけんじゃ)
 うすあかく いっそう陰惨な雲から
 みぞれは びちょびちょ降ってくる
 (あめゆじゅとてちてけんじゃ)

 この繰り返される「あめゆじゅとてちてけんじゃ」とは、死の床にあった妹のとし子が、熱で渇いた喉を潤そうと兄の賢治に「あめゆき(霙)を取って来て下さい」と頼む言葉です。10代の多感な田舎少年(私のことです)の胸に余程響いたのでしょう、私は生まれて初めて文庫本の詩集を買い、それこそ暗記するくらい何度も読み返したものです。思えば、我乍らこんな純朴な青春期もあったんだよなあ。

 そしてこの詩の最後の部分、心に沁みる名文です。

 この雪は どこを選ぼうにも
 あんまりどこも まっしろなのだ
 あんなおそろしい みだれた空から
 このうつくしい雪がきたのだ

 (うまれでくるたて
   こんどは こたにわりやのごとばかりで
    くるしまなよに うまれてくる)

 お前が食べるこの二椀の雪に
 わたくしは今 こころから祈る
 どうかこれが兜率(とそつ)の天の食(じき)に変わって
 やがては お前とみんなとに
 聖い資糧(かて)をもたらすことを
 わたくしの すべての幸いをかけて願う

 とし子は兄の賢治にこう言い残したんですね。哀切を極めるとはこの事か、そう思ったものでした。

 (うまれでくるたて
   こんどは こたにわりやのごとばかりで
    くるしまなよに うまれてくる)

 「今度生まれてくるときは、お兄さんがこんなに私のことばかりで、苦しまないように生まれてくるからね」

 賢治がこの「永訣の朝」を書き上げた日の夜、とし子は肺結核のため24歳の若さで亡くなります。まさしく「永訣の朝」、何時までも心に残る名作ですねえ。




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Posted by 府中店長 at 08:06Comments(0)店長日記