府中家具　バンザイ！

　昨定休日、予定の二つの会計作業を昼過ぎに終え、松江市の書店へと向かいました。新刊の文庫本でもあれば2～3冊買ってみようと国道9号線を走っていましたら、左手に「うどん」の看板。丁度時分時だし、昼飯はうどんでも食べるかと車をパーキングに入れて店内に入ってみました。

　入って直ぐ、「これは駅の立ち食いうどんと一緒だな」と思いました。オープンキッチンって言うんですか、厨房で働く5～6名の女の人の姿が正面に見えますし、カウンターには色々な種物がバットに入れて乗せてあります。しかし、幾ら探しても食券の自販機がありません。「これは？」とまごつく私を素早く見つけた一人のおばちゃん、スッスーと近寄ってきます。

「お客さん、うちはセルフの店なんですよ」
「えっ、セルフ？どうやるんですか？」
「そこのトレーにお皿を乗せて、最初に好きな物を取ってください」
「ああ、それをうどんの上に乗せるんですね」
「いえ、席には醤油もソースもありますから、そのまま食べても良いんですよ」
「ふむふむ、で、うどんは？」
「それは最後に注文してもらって、その後にお支払いです」

　これはどうも、出張の時に利用させて貰う立ち食いうどんとはちょっとシステムが違う様です。立ち食いうどんですと自販機で食券を買い、カウンターに乗せて「キツネ」っておばちゃんに言うと、約45秒で出来上がり。その時こちらはコップに水を入れ、既に割りばしを手にして今や遅しと待ち構えます。のぞみ号発車まであと7分、でも悠々と間に合います。

　ここで、出張時の私のお薦め立ち食い屋さんをご紹介しましょう。
先ずは上で紹介した岡山駅の新幹線ホーム。ここは讃岐の冷凍うどんを使っていますので腰が強く、おばちゃんはこの道ん十年、10人も入れば満員御礼となるコの字型のカウンターの内側でひたすらそばとうどんを作り続けます。朝飯食べずに朝一番の列車に乗った時、大変お世話になっています。美味しいですよ。

　次に新大阪駅の地下、地下って言っても本当は一階部分になるのですが、ここの団体待合室の横、おばちゃん二人が切り盛りする立ち食いうどん、ここの「きざみ」は絶品です。

　「きざみ」っちゅうのはですね、キツネのアゲをさいの目状に文字通り刻み、それがビャーとうどんの上一面に散らしてありましてですね、その上にネギをまたバァーと掛けてあるんです。アゲを刻む事によって出し汁がアゲに万遍なくしみ込み、そこにネギの青臭さが相まって、寒い日などは食べ終わった後に「ハァ～」とため息が出るほどです。新大阪駅の一番下、食堂街の外れ、団体待合室の隣、これを目安にお探し下さい。

　最後に同じく新大阪駅、新幹線から在来線に乗り換える場所にある立ち食い屋さん、ここは凄いですよ～。何が凄いって言って、ともかく早い。ここは自販で食券のシステムではなく、入口に座るおばちゃんに注文してお金を払います。おばちゃんの口元にはマイクが伸び、お客さんにお釣りを渡しながら「キツネ～、うどん～、一丁」とか「天ぷら～、そば～、一丁」とかゆっくりとした口調で仰るんですよ。そしてですね、お釣りを財布にしまって約2～3メーター離れたカウンターに辿り着いて荷物を下に降ろすか降ろさないかと言ったタイミングで注文したものが出て来るんです。中で働くのは男性が5～6人、きっと受け持ちが決まっているのでしょう。

　おばちゃんの「キツネ～」でキツネ担当者は素早くキツネを用意し、「うどん～」の声にうどん担当者が「よしっ！」とうどんを湯に投入、横では出し汁担当者が器に汁を入れ、「ええい未だか？」と刻みネギ担当者、とまあこんな具合だと思います。ですからですねえ、もう無茶苦茶早いんですわ。あのおばちゃんのゆっくりとした口調、長年の経験が生きた熟練の技と申せましょう。

　さてセルフうどん。悩んだ末に選んだ種物がエビ天にイカ天、素うどんの並盛りを頼んで480円位の支払い。味？味はですねえ、やっぱり新大阪駅のおばちゃんの「きざみ」には遠く及びませんでした。まあ推定年齢75歳と69歳のお二人の経験には、ちょっと敵わないでしょうねえ。因みにこのお店で一番のお薦めはカレーライスとうどんのセットだそうでして、これが499円。500円出して1円のお釣りかあ、なんとまあ、泣かせるねえ。




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